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魂の叫び~響け、届け。~

粉雪舞う熱情の中に・後編

粉雪舞う熱情の中に・後編R-15


シュンッ! と云う扉の閉まる音と共にカチリと小さな電子音。ドアロックの音だ。ルルーシュの私室は密室になった。ふたりを阻むものは互いの着衣しかない。
「…………」
「…………」
沈黙が流れる。切り出すきっかけが掴めないでいる。ここまで誘っておいて何を躊躇う? 整頓された室内に存在感のある大きめのベッドがこれからを予言する様で、このベッドを前に顔を合わせるのは酷く恥ずかしいものだった。
(どうしろって云うんだ……!)
ルルーシュは思った。改めて自らスザクを誘惑するのか!? 今更!?
7年間の空白があるとはいえ、この国に来てから親友として付き合ってきた彼を性的に誘惑するなんて――出来る筈がない。
ベッドを前に困惑するルルーシュの肩にスザクの掌が置かれた。ただそれだけの接触なのに、ルルーシュは思わず身を硬くする。緊張している? まさか!!
「どうしたのルルーシュ? 座りなよ、突っ立ってないでさ。ルルーシュの部屋なんでしょ?」
硬直気味のルルーシュにスザクは何気無く触れて、ストン、とベッドに腰掛けさせた。ここまで攻略出来たスザクに、この先の展開はさほど困難ではない。
ベッドに腰掛けさせたルルーシュの両肩に掌を乗せて、スザクは当惑の眼差しで見上げてくるルルーシュの視線を絡めとり、ゆっくりと顔を近付ける。
「ルルーシュの唇は甘いね……」
そう囁いて、唇をついばむような軽いキスを繰り返す。そっと触れては離れる唇に名残惜しさを感じて、ルルーシュは腕をあげてスザクの首にまわした。離れない様に抱き寄せ、今度はルルーシュの方から深く口付けた。
ギシ、とベッドが軋んだ。スザクが片膝をベッドに乗せたのだ。座っているルルーシュに覆い被さる姿勢になって、ゆっくりと互いの身をベッドに横たえた。
 幼い頃戯れに触れ合った体躯は子供のそれでなく、大人になりかけた少年のものになっていた。風呂上がりにパジャマに着替えていた二人だったが、今のこの現時点ではパジャマなんて邪魔でしかない。
スザクのボタンを外そうとする手付きは不慣れでもどかしくて、ルルーシュは自分で外そうとしたが、その手はスザクによってやんわりと制止された。
「駄目だよ。僕にやらせて。ルルーシュは僕のを脱がせてよ」
「主導権を譲るつもりはないんだがな。お前は俺とナナリーの騎士【ナイト】だろう? 主には従え」
「日本語には『下剋上』って言葉があるんだよね。下の者が上を制する。君達兄妹の騎士は喜んで務めさせて貰うけど、ベッドはどうかな?」
クス、と小さく笑ってスザクは云う。はだけさせたパジャマから腕を引き抜いて脱がすと、露になったルルーシュの滑らかな肌に指先を這わせた。
スザクのパジャマを脱がす事に集中していたルルーシュは、ボタンを全て外し終えて次に下を引き下ろそうとしていた処に胸元を探られて、びくんッ、と身を震わせた。過敏になっている。触れられるだけでこんなに躯が勝手に反応する。他人の体温がこんなにも心地好いものだなんて知らなかった。
「スザク……ッ」
名を。
呼ぶ事しか、出来なくて。
同性との行為がどんなものなのかぐらい、知識として知っている。これからそれをするのだと云う事も。しかし不思議と、違和感なくその事実を受け入れている自分がいる。あくまで冷静に行為に到ろうとする自分。
――求めていたのかも知れない。
二人の間に横たわる7年間の空白。まるでそれを埋める様に、抱き合おうと相手を求めるのかも知れない。
ルルーシュの素肌に触れて、慈しむ様に優しく愛撫するスザクの掌は、次第に下肢へと降りる。はりつめた熱をいとおしく思いながら掌に包み込むと、ルルーシュの唇から吐息がこぼれた。
その反応に満足の笑みを浮かべて、スザクは徐にそれを咥え込んだ。細い腰
がビクリと跳ね、ルルーシュの両手が拒む様にスザクの頭を押し退けようとしたが、手首をまとめて掴んで拒絶を阻んだ。
「云ったでしょう? 泣かすよって。さっきは散々煽られたからね、仕返し」
濡れた唇を舐めて悪戯っぽくスザクは云った。同性の証たるそれさえもいとおしく、丁寧に舐めあげる。ルルーシュは最初こそ拒もうとしていたが、次第に甘い吐息へと変化していく自分自身に戸惑っていた。
そしてソコに忍んで来る指にルルーシュの身がビクリと跳ねる。解放された手の甲で口元を覆って、乱れる吐息を抑えようとするルルーシュに、スザクは宥めるようにキスをした。
「ねぇ……初めて?」
「……ッ……当たり前だッ」
「だよね。じゃ、ゆっくり慣らそうか」
云うと、人差し指で円を描く様に菊花の周りをほぐしはじめた。キスはやめない。幾度となく角度を変えて口付けて絡められる舌の甘さに酔いそうになりながら、下肢の刺激に身を震わせる。
「スザク……慣れてないか、お前!?」
「そんな事ないよ、初めてだよ僕も。ただロイドさんって上司に話聞いた事があって。『軍にいると多いから知識は必要だ』って。『知らないと任務に響く』って」
「ロイド……? アスプルンド伯爵家子息の変わり者にいたな、そんな名前が」
「もう……今は僕の事だけ考えてよ。……ううん、考えられなくさせてあげる」
名残惜しげにキスをして、それからスザクはルルーシュの下肢へと顔を埋めた。
「待て、何を……ん……ッ……!」
あろうことか、スザクはルルーシュの蕾に舌を這わせた。さっきまで指先でじっくり愛撫されていたソコに時折舌が侵入する。思わず声をあげそうになったルルーシュは、口元を覆う手の甲に歯を立てた。
「――ふ……ッ……う……」
それでも洩れる吐息に甘い熱が籠る。背筋を駆け抜ける快楽に抗えず、大
きく広げさせられた脚を意識する余裕さえない。雪の灯りが射し込むベッドで、あられもない姿にさせられている羞恥は、ゾクゾクする躯を煽るばかりだ。
「もう……よせ……あ、あぁ……ッ」
拒もうとする言葉さえ封じられ、甘ったるい喘ぎになる。それでも脚の間に
埋められたスザクの頭を引き剥がすのは、困難を極めながらも成功した。
「気持ち好くなかったかな……厭、だった?」
「厭……じゃないが……その……あんな場所を……」
舌の滑らかなルルーシュが、しどろもどろになるのを見られるのは貴重である。
「大丈夫。ルルーシュなら何処もみんな綺麗だよ。でもここほぐさないと後が大変だから、濡らしたくて」
「……サイドボードの抽出開けてみろ。いちばん上だ。鍵は外してある」
ナイトスタンドの置かれたサイドボードを指してルルーシュは云った。
「最初からそのつもりだったからな。それぐらいしか思い付かなかった」
「ルルーシュこれ……ベビーローション?」
低刺激のローションだ。秘部に使っても差し支え無さそうではある。
「無いよりいいんじゃないか? それを使え。あんな事いつまでもされていたらこっちがもたない」
「イキたい時は先にイッていいよ? ルルーシュが先にイッても僕やめないけどね。こんなものまで用意して……僕としたかったんだって、自惚れちゃうよ?」
「自惚れていい。俺の全てをお前にやるから、お前の全てを俺に寄越せ」
「命令なのかな、それは?」
「任意だ。俺が本気で命令したらお前は絶対に逆らえない。だから任意だ」
「絶対に逆らえない命令か。ルルーシュならそれもいいよ。でもそんな事しなくたって、僕の全ては君にあげる。だから君の全てを貰うよ」
その言葉は宣告。スザクはローションの蓋を開けてたっぷりと手に取ると、スザク自身とルルーシュの蕾に塗り付けた。手指にも馴染ませて、熱っぽい囁き声で云った。
「もうやめられないよ……? 痛かったらごめん」
「いいから早くしろ。もう……」
もう、二人離れてなんていられない。素肌で抱き合って0センチ。この距離をマイナスまで近付きたい。
「ルルーシュ……君が好きだ。愛してる。だから……許して……」
スザクのしなやかな指が一本、ルルーシュの蕾に侵入した。その異物感にルルーシュは身を竦ませる。
「滅茶苦茶締め付けてる。痛い?」
心配そうに問掛けるスザクに、ルルーシュはふるふると首を振った。しかし顰められた眉が下肢を犯す指に脅えている。息を詰めて堪える様は健気ですらある。
スザクはそっと指を動かし始めた。異物を締め付ける蕾はローションに濡れて、キツさの割に滑らかだ。奥を押し広げる様に円く指を動かすと、ルルーシュはギュッと目を閉ざして声を押し殺す様に唇を噛んだ。
「駄目だよ……傷になる。声、殺さないで。聴かせてよ、僕だけに君の声を」
スザクは囁く。しかしルルーシュは首を振った。
「強情だね。もっとひろげようか」
云って、スザクはルルーシュの中に忍ぶ指を増やした。人差し指と中指を差し入れ、バタバタと動かして中を広げる。
「ア……ああ……ッ……!」
これには堪らず、ルルーシュの唇から嬌声があがる。スザクはいとおしげにルルーシュの髪を指先ですいた。中で動かす指は止めない。ビクビクンッとルルーシュの背がのけ反る。露になる白い喉に舌を這わせると、ルルーシュは小さく身震いした。
スザクは、壊れ物の様に頼りなく身を竦ませるルルーシュを、堪らなくいとおしく思った。
「ん……あ……ああ……ッ」
吐息混じりの声が、次第に痛みでなく快楽を告げる様に変化した。キツく締め付ける蕾に籠る力が抜けて、スザクの指を受け入れ始める。その変化を見逃すわけには行かない。スザクは薬指までも潜り込ませた。 ルルーシュは秘部に指を3本も受け入れて、そのキツさに震えながら、スザクの背に腕をまわして下肢の痛みをまぎらわせようと爪を立てた。注ぎ足されるローションで菊花はしとどに濡れている。
ルルーシュの最奥を探っていた指が、引き抜かれようとした。キツさから解放されると同時に、腰に甘さを残す快楽を逃す様で、ルルーシュは無意識に菊花をすぼませた。――と、入口まで引き抜かれかけた3本の指が、再び最奥を貫いた。
「――ヒッ……あ……ッ」
上擦った声があがる。ルルーシュはますます指先に力を込めてスザクの背に爪を立てた。その爪の痛みさえも甘い疼き。スザクは構わず指を抜き射しする。その度に溢れる声は甘い悲鳴。ルルーシュの目尻に涙が滲む。
「スザク……ッ、もう、いいから……早く……ッ」
求める声は懇願に近い。スザクは頷いて、ルルーシュの頬に軽いキスを落とすと、自身とルルーシュにローションを塗り直して一息に――貫いた。
「ふ……ッ……あ……スザ、ク……ッ」
「ルルーシュ……可愛い……」
「バッ……カヤロ……ッ……は……っ……ああッ」
こじあけられた蕾から、ツ、と血が滲む。それが却って滑りをよくする。抜き射しされる凶器。揺さぶられる腰は痛みと快楽が入り混じって甘く疼く。ルルーシュはスザクの腰に脚を絡めてより深く繋がろうとした。
「待ってよ……ココ、好くない?」
スザクは最奥を突いていた楔を、入口のギリギリまで引き抜いて留めた。甘く疼く入口が快楽に震える。腰に絡む脚が弛んだのを見計らって、スザクは再びルルーシュの中を深く侵略した。
「んあ……ッ」
熱を孕む吐息。挿入しやすい様に高く掲げられていた脚が弛緩して脱力する。ルルーシュは今宵何度目かの精を放って、今は繋がっている互いの下腹部を白濁液のぬめりで汚した。
「綺麗だよ、ルルーシュ……それに可愛い」
「褒め言葉じゃないな、今の俺に可愛いなんて。第一こんな無様な俺が……綺麗な筈がない」
男が男に組み敷かれて喘ぐ様が綺麗な筈がない。それに可愛いなんて同年代
の男に云われて、素直に喜んでいられるか?
「無様? 僕に抱かれるのが? 君が求めるのに」
「……ッ! 云っただろう? こんな事許すのはお前だけだと。だが俺だって……男だ」
「…………」
スザクは自身をゆっくり引き抜いて、ルルーシュにシーツをかけてやりながら云った。
「君の全ては僕の全てだよ。全部くれるって云ったよね? 全部あげるとも僕は云った。それじゃ駄目かな?」
ルルーシュの隣に横たわり、片肘をついて顎を乗せた姿勢で、ルルーシュをシーツごと抱き寄せて問掛ける。まだ甘く疼く下肢に戸惑いを隠せず、つと視線を逸らしてルルーシュは応じた。
「駄目じゃない。それでいいんだ、俺とお前なら。だが俺もお前も男で……」
「禁忌を犯すのも、君となら怖くない。好きだよ、ルルーシュ。それでも、君は君を赦せない?」
「……ふ……敵わないな、お前には。認めるしかないじゃないか。俺もお前が好きなんだと」
「今の、もう一度聞きたいな。『俺も』……何?」
「云わないよ、馬鹿」
ルルーシュの言葉にスザクはクスクスと小さく笑った。
「そういう処も好きだよ。ねぇ、シャワー浴びようか。汗ばんでる。セックスってスポーツだよね」
「……事も無げに凄い事云い出すんだな。割り切って抱いたのか?」
「まさか! 本気の必死だったよ。壊したくないけど抱きたくて……抑えられなかった。ごめん、痛かったよね?」
「これぐらい痛みのうちに入りはしないさ。……こう、されたかったんだ」
「ルルーシュ……自惚れるよ? 少しは愛されてるんじゃないかって」
その言葉には応えず、ルルーシュは隣の部屋を指した。
「個室のシャワールームが隣についてる。そこの黒いドアだ。好きに使って構わない」
「一緒に浴びようよ。嫌……かな? またしたくなっちゃったら困るよね?」
「何余計な気をまわしてる? 俺はその……まだ立てそうにない」
言葉の後半はボソボソと口ごもる。好くて感じ過ぎたから、下半身に力が入らないなんて云いたくない。 しかし余計な処で鋭いスザクはルルーシュを横抱きに抱えあげた。満面の笑みが憎らしい。
「こうすればいいじゃない。中に出したのかきださないと明日辛いよ?」
お互い一糸纏わぬ姿で抱えあげられる。拒もうにも力では敵わないし、本当に嫌でも無いのが弱い処だ。ルルーシュは気恥ずかしく思いながらも、スザクの逞しい胸に身を預けた。


窮屈なユニットバスに二人で、温かいシャワーを浴びた。いいように泣かされた体には愛された痕が残る。胸元のみならず、下腹部、脚、そして恐らく――背中にも。鈍く痛む赤い花弁をいとおしげに辿りながら、スザクは云う。
「僕の印、消えたら教えて。また新しく痕を刻みたい」
「なんて事云い出すんだ!? ああ全く、今だけは流石にナナリーの目が不自由な事に感謝するよ」
「ナナリーとルルーシュを奪い合うのも楽しそうだ」
クスクス笑うスザクに、ルルーシュは溜め息で応じる。
「お前は俺とナナリーの騎士であればいいんだ」
「イエス ユア ハイネス。ルルーシュ、中に出したの、洗わないとね」
冗談めかして敬礼してみせたスザクは、シャワーのヘッドを手にルルーシュの下肢へ指を潜らせた。白濁液と血が入り混じってルルーシュの脚を伝う。
「は……あ……ッ……よせ、スザ……ク……ッ」
さっきまでスザク自身が侵略していたそこは難無く指を受け入れる。そして再び甘い熱を呼び起こした。
「キツかったら云って? 抜いてあげる」
ルルーシュの上体をバスタブに預けて腰を上げる姿勢にさせて、スザクは中に放った己の精をかきだした。欲望が首をもたげるが、ここで犯してしまってはシャワーの意味がない。自身を抑えてルルーシュの中を清める。
血と精を流す頃には、お互いどうにもならない熱を抱えてしまっていた。スザクはルルーシュをバスタブの縁に座らせると、屹立するルルーシュ自身を咥え込み、片手で自分を慰めた。
「スザ……お前のは俺が……」
「駄目。またしたくなっちゃったら困る。僕に任せて。――いいよ、出して」
スザクの自身を擦る手が性急に動く。
「んん……ッ」
殆んど同時に、二人絶頂に達した。


「ん……」
下肢の痛みに目を覚ますと、いつもより窮屈なベッド――C.C.に奪われてからのソファに比べれば充分広いのだが――の隣にはスザクが穏やかな寝息をたてて眠っていた。その精悍な体つきを前に、ルルーシュは昨夜の行為を思い出す。
シャワールームで達した後、シーツを取り替えて二人で床についたのだ。軽いキスを繰り返し、笑い合いながら、いつしか眠り落ちたらしい。
「よもやこうなるとは……な」
スザクと関係を結んでしまった。友達以上の『好き』が互いの間に会ったのだ。喜んでいいのだろうか?――今は敵対する関係にあると云うのに。
(戦場だったら、愛なんて情けなどない。俺は修羅の道を行く)
ルルーシュはそう、自分に云い聞かせて。
スザクが目を覚ますまで彼の呼吸を妨げるキスを仕掛けた。



〈了〉







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